親爺の鬼平 - 艶物話

-- お盗め --

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6−閑話

ちなみに、「さいとう・たかお作 久保田千太郎脚色 リイド社刊」の鬼平犯科帳では、こんな塩梅に描かれているんですな。

猫じゃらしの女
密偵伊三次は行きつけの岡場所・上野山下下谷町二丁目の〔けころ〕およねと、もう二年のなじみだが、この「およね」が猫じゃらし(小さな竹籠に鈴が三個入っており上下に朱色の紐のついた猫をじゃらして遊ぶ玩具だとか)を客の腰につけさせ[いたす]のが好きという些か変わった癖がある。
なんでも「これを付けるようになってから、いやな客も気にならなくなった」とか。
でも「伊三さん」は、ちょいとお気に召さない御様子・・・が、やっぱり「およね」を憎からず思ってる風なのが男女の妙といったやつか。
ちなみに、この話も原作と劇画版では伊三次の設定と顛末が違います。
この時点で伊三次は、まだ密偵になっていない・・・で、準レギュラーじゃなくてゲストキャラなんですよ。
そして、この顛末は!・・・・コミックスで読んでね(^ ^)  というわけで、下のリード社さんのリンクからどうぞ。
狐火
密偵おまさが叔母の葬儀に出た後、遠縁の家へ一泊した帰り、新宿の渡し場のところで、かつて自身はもとより平蔵や彦十とも縁の深い今は亡き大盗「狐火の勇五郎」の右腕といわれた「瀬戸川の源七」を偶然見かける。
そんな折り、薬種屋〔山田屋〕で皆殺しの畜生盗きをした盗賊が「狐火札」を残していく。
おまさの心は揺れる・・・というのも「二代目狐火」とおまさには、平蔵も知らない過去があったのだ。

この話、「おまさ」「平蔵」「彦十」それぞれの過去と現在が絡んで非常に興味深い一編になってますな。
「おまさ」の女としての思いが、かつて掟により引き離された男と平蔵への娘のころの思慕と今の尊敬、そしてお役目への責任感との間で交差する。
平蔵も勇五郎には、返せぬ負債があったわけですが、これがまた・・・。
狐火
鬼平が「入江町の銕」とか「本所の鬼銕」とか言ってたころ、おまさの父「鶴の忠助」に引き合わされ、盗賊と知りつつも世話になった「狐火の勇五郎」。
なんと「銕っつぁん」酷いもんで、この勇五郎が「なめるようにして可愛がった」妾の「お静」とやっちゃいます。
気に入って酒食のみか金の世話までしてくれる恩を、めいっぱい裏切っちまいます。

ほんで、そのことを知った勇五郎、逆上して銕三郎を襲うか・・・というとさにあらず、右のようなセリフとなるわけで、流石の「銕っつぁん」も一言も返すことばがなかったというのですな。さ〜すが大物ぅ。