親爺の鬼平 - 艶物話

-- お盗め --

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4−閑話

ちなみに、「さいとう・たかお作 久保田千太郎脚色 リイド社刊」の鬼平犯科帳では、こんな塩梅に描かれているんですな。

五年目の客
鬼平が左馬之助と一杯やって粂八の操る舟に乗り込んだとき、粂八がたまたま見つけた今戸橋を渡り掛かる商人風の男、兇盗羽佐間の文蔵一味「江口の音吉」を岸井左馬之助がつけた結果報告を深川・鶴やでするひとコマ。
左馬之助曰く「ちょいとおれでも箸をつけたくなるような」色白の三十がらみの大年増だが肉置きのよい女・・・だそうで。
終わった後の女性の少し虚脱したような表情とか、ちょいとほつれた髪なんかは、たまらんなぁ・・・と思ってるのは私だけではあるまい。
ところで三十位で「大年増」かよ!と感じるわけですが、江戸の頃は十六歳位迄が娘、二十歳位迄が新造、二十代前半は年増、半ばから二十七・八は中年増、三十歳辺りまでを大年増と呼び分けていたそうです。
もっと上の歳になると何て言うのかなぁ。女扱いしてなかったのか?
五年目の客
今は旅籠「丹波屋」の後添になっている「お吉」だが、かつては品川宿の百足屋という店で遊女をしており、その折り客として来た「江口の音吉」から金五十両を盗んで逃げていたのでした。
で・・・丹波屋の客(ホントは盗みの引こみのため)として来た音吉を見て、てっきり気づかれたと思いこみ「今の暮らしを守るため」密会を続けることとなったのですが・・・。
実は音吉、全然気づいてませんで脅えるお吉の様を、逆に女将が色目を使ってきたと勘違いしていたんですな。まあ、遊女の頃のお吉は痩せて病気持ちで五十婆かと見まごう容姿だったとかで、気づかなくても当たり前といった感じですが、結局お吉の一人相撲で深みにはまっていくんです・・・悲しきかな・・・。
おみね徳次郎
網切の甚五郎配下「山彦」の徳次郎が素性を隠しまわり髪結として次の盗めまでの女房とした女「おみね」。
どちらも知らぬながら、おみねもまた「法楽寺の直右衛門」一味の女賊だった。
男より女の方が、どうも上手のようで・・・・。
ところで、この辺の話、「さいとう・たかお版鬼平犯科帳」では原作と大夫違いまして、徳次郎は甲賀の鈴鹿一味の大頭目「二代目川獺の又兵衛」の子分で、おみねは「煙草問屋水口屋清五郎」ことかつての大盗蓑火の喜之助の右腕「伊賀の音五郎」の娘という設定。
しかも、おみねは徳次郎が鈴鹿一味で水口屋を狙ってることも知っていて探っており、そもそも、伊賀・甲賀の因縁からくる諍いが発端の一大陰謀活劇になっておるのですよ。